美しい人

第一章 ミントの出逢い

整形外科医の岬京助(田村正和)は、医者同士の闘争や派閥争いを避けるため、大学病院の外科部長を辞めて美容外科病院を開業した。ある日、京助の前に、謎の女性・みゆき(常盤貴子)が現れる。偽名を使い、「私の顔を全て変えて欲しい」言うみゆきに、不審なものを感じた京助は依頼を断る。しかし、みゆきは何度も京助の元を訪れ手術を懇願する。 ある時、雨にずぶ濡れになったみゆきは、京助に身体中に刻まれた無数の傷痕を見せ・・・。

第二章 ローズマリーの夜

京助(田村正和)はみゆき(常盤貴子)の顔を愛する亡き妻の面影に似せて作り変えた。生まれ変わったみゆきは新しい人生に向けて歩み始める。解放的な気分になったみゆきは京助の部下で整形外科医の篤(柳沢慎吾)とデートした挙げ句、酔ってレストランの化粧室に倒れ込む。偶然その場に居合わせた京助はみゆきを連れて帰り、友人の朝美(森下愛子)にその身を預ける。朝美はみゆきが京助の亡き妻・祥子に似ている事に気づき・・・。

第三章 レモンバームの王子様

行くあてのないみゆき(常盤貴子)を、京助(田村正和)は自宅に引き取り一緒に暮らし始める。亡き妻・祥子に似せたみゆきとの生活に、京助は安らぎを覚える。そんな時、京助の元にみゆきの夫・村雨(大沢たかお)から電話が入る。刑事である村雨は、以前に京助が貸した祥子の洋服を手がかりに、みゆきの行方を捜していたのだ。その夜、京助はみゆきに仕事を見つけ独立する事を勧める。村雨の追跡を心配した上でのことだったが、何も知らないみゆきは京助の言葉を理解出来ず、雨の中へ飛び出してしまう。

第四章 ボリジの恋占い

自立を決意したみゆき(常盤貴子)は1人暮らしを始め、京助(田村正和)のマンションを出る。一抹の寂しさを感じる京助、さらにみゆきがホステスとして勤め始めるとやるせない気持ちになる。これ以上心を揺さぶられる事に戸惑いを感じた京助は、自分を慕ってくるみゆきを突き放す。一方、妻を愛しながらも暴力を繰り返す男・村雨(大沢たかお)に興味を抱いた朝美(森下愛子)は、自ら近づいていき・・・。

第五章 ラベンダーの想い出

京助(田村正和)を愛してしまったみゆき(常盤貴子)は、京助の愛した亡妻・祥子になろうとする。朝美(森下愛子)の手を借りて、服装の趣味から化粧、しぐさに至るまで祥子を真似るみゆき。そんな姿に京助は激しく心を乱される。 一方、村雨(大沢たかお)は銀行の監視カメラに写ったみゆきの写真を入手し、整形した妻とは気づかないまま、その行方を捜し始めていた。偶然、村雨の追跡が迫っている事を知った京助はみゆきを助け出し、自宅にかくまう。

第六章 セージの秘密

戸惑いながらも京助(田村正和)とみゆき(常盤貴子)は結ばれ、互いの愛を確かめあう。しかし、村雨(大沢たかお)の追跡は徐々に2人に近づきつつあった。京助は少しでも遠くに逃れるため、みゆきを旅行に誘う。大学時代の友人・武藤(峰岸徹)が経営する山梨のペンションで穏やかな時間を過ごす京助とみゆき。しかしそこでみゆきは、京助と祥子にまつわる過去を知る。美しく魅惑的だった祥子を巡り争った親友同士の京助と武藤とそして神山、その3人の中から祥子はセージの花を使ったくじ引きで結婚相手を決めたというのだ。さらに、みゆきは京助から衝撃の告白を受ける。

第七章 フォックスグローブの罠

村雨(大沢たかお)は朝美(森下愛子)を人質にみゆき(常盤貴子)を呼び出す。みゆきは自由になって、京助(田村正和)との愛を成就させるため、みゆきとして村雨の元に向かう。顔を変え別人となって現れたみゆき。が、村雨も既にみゆきが整形したこと、そしてみゆきの失踪の影に京助がいることに気づいていたのだ。みゆきと村雨は朝美を残し、2人で出て行く。事実を知った京助は、みゆきの行方を必死で探し続ける。その頃みゆきは、京助との愛を村雨に告白、別れて欲しいと訴えるが・・・。

第八章 アイブライドの涙

村雨(大沢たかお)と消えたみゆき(常盤貴子)はそのまま自宅に戻った。そして京助(田村正和)の顔、京助への愛を全て忘れてしまっていた。みゆき自身も村雨から心神喪失状態でしばしば記憶をなくす病気だと思い込まされていた。村雨の言葉を信じるみゆきは、記憶のないまま彼の愛に応えようとする。 ある日、みゆきは買物の途中で京助と会う。京助を憶えていないみゆきは、「夫を愛している」と告げる。そんなみゆきに京助は「アイブライド」というハーブを渡し別れるが・・・。

第九章 グリーンアローの鮮血

京助(田村正和)は村雨(大沢たかお)からみゆき(常盤貴子)を取り戻す。以前、村雨が署名捺印した離婚届けを持っていた京助は、それをみゆきに渡しプロポーズする。今まで感じたことのないほどの幸せに、みゆきは微かな不安を覚える。そんなみゆきの予感が的中するように、暴力団から大金を盗んで逃走した村雨が京助の娘・圭子を拉致監禁する。さらにみゆきは、朝美(森下愛子)が京助に亡妻・祥子の秘められた想いを明かすのを聞いてしまい・・・。

最終章 ダンディライオンの愛

村雨(大沢たかお)の命を奪おうとするみゆき(常盤貴子)。が、逆にみゆきは背中に村雨の銃弾を浴び、瀕死の状態に陥る。京助(田村正和)は自ら手術を執刀し、みゆきの命を救う。しかし亡妻・祥子との真実の愛を知った京助は、みゆきへの愛が偽りと気づく。自分が傍にいればみゆきは自由になれないと思う京助は、祥子が亡くなったイタリアで暮らす事を決める。京助の祥子への愛を人一倍理解するみゆきは、辛い想いを抱きながら京助との別れを受け入れるが・・・。