歌詞

誰が悲しみのバンドネオン

あがた森魚

作詞
マリアーノ・モーレス/訳詞:あがた森魚
作曲
エンリケ・サントス・ディセボロ

パリ……大博覧会 大観覧車廻った

その束の間のこと

それは二十世紀の時計の廻りはじめた夜の出来事

イルミネーションがいろどりはじめ

リンドバークがルージュをひいた

ツェッペリンも空に葉巻をくゆらせ

ニジンスキーがひばりの様に躍った


なぜあなたと別れ別れに

生きることになってしまったのだろう

おりしも世界は不幸な戦争に

みなやつれ果てていたけど

僕らの楽団は世界中めぐり

それはそれでしあわせだった

世界の街ではねずみ色の不幸をまとい

僕らは彼らと元気を出そうと

かなでたつもりだった

誰しもが同じ星の下

ひもじく歩く子供だったから


同じテーブルに座れること

同じものを食べる夢

そんな夢さえ バンドネオンをかなでたところで

ひもじさすら救えず

あなたともうやっていけないと

楽譜をたくさん書き バンドネオンを連れ

乞われるままに列車に乗り

街から街へとかなで歩いた日々


キャンドルのあかりだけで

二人過ごしたクリスマスイヴのこと

またたく星にあなたの名を呼んだ夜

どれもこれもがかえらぬ日々の淡い夢

誰しもがいたみ またよろこび生きた日々


なぜあなたと別れ別れに

生きることになってしまったのだろう

街々には平和がよみがえり

誰ともうまくやれる時が来たのに

僕らの楽団は世界中めぐり

それはそれでしあわせだった

それなのに僕らは

二人だけの悲しみをもち始め

僕らは互いに元気を出そうと

かなでたつもりだった

誰しもが同じ星の下

ひもじく歩く子供だったから


同じ屋根の下に暮らすこと

同じ夢をもちあうこと

そんな夢さえ バンドネオンをかなでたところで

夢すら失いかけ

あなたを忘れてしまおうと

楽譜をたくさん書き バンドネオンを連れ

乞われるままに列車に乗り

街から街へかなで歩いた日々


明りをつける気力もなく

ひとりたたずんだクリスマスイヴのこと

またたく星にあなたと歩いた夜

どれもこれもがいつか知る淡い夢の日々

誰しもがいたみ またよろこび生きた日々

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